饗宴外交の舞台裏 (173)

ミシェル夫人に軍配が上がった「次期ファーストレディー候補」のファッション対決

執筆者:西川恵 2012年10月12日
エリア: 北米
対照的なドレスに身を包んだミシェル夫人(左)とアン夫人(c)AFP=時事
対照的なドレスに身を包んだミシェル夫人(左)とアン夫人(c)AFP=時事

 ニューヨークのファッション・ウィークが9月13日までの8日間行なわれた。デザイナーたちは来年の春夏もののコレクションをファッション・ショーや展示会で披露したが、会期中、ファッション・ジャーナリストやバイヤーの話題をさらったのは、直前に開かれた民主党全国大会(9月4日-6日)でのミシェル・オバマ夫人の演説と、着ていたドレスだった。

高支持率を維持する「マム・イン・チーフ」

 大会初日の掉尾を飾る夫人の大統領支援要請演説は、前から注目の的だった。人気がもう1つ伸びない夫に対して、夫人は高い支持率を維持している。「母親最高司令官(マム・イン・チーフ)」を自称し、政治とは距離を置き、ホワイトハウスでの菜園作りなどを通して、子供の健康や肥満問題に積極的に取り組んできたことが高い好感度の背景にある。今や大統領にとって最強の助っ人だ。
 4日夜、拍手喝采のなか登壇した夫人は、にぶい光沢のバラ色のプリント地で作られたAラインのワンピースを身にまとっていた。この日のために米国のアフリカ系女性デザイナー、トレイシー・リースに特注した服である。大柄な体躯をより大胆に見せるノースリーブの、体にフィットした着こなしはいつものこと。度々スタンディング・オベーションに中断されながら、夫人は30分にわたって熱弁を振るった。
「彼の信念は私たちが恋に落ちたときと何も変わらない」と、経済政策や医療保険改革は夫の信念に基づく政策であり、政治的打算からのものでないと強調。「私は初心を忘れない彼を4年前よりも愛している」と述べると涙ぐむ聴衆も。演説のピークには毎分2万8003ツイートを記録したことからも、その注目度が想像できる。

カテゴリ:
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top