ODAの定義は改変されるべきか

執筆者:平野克己 2013年7月29日
タグ: 中国 日本
エリア: アフリカ

 政府開発援助(ODA)の定義は、

「政府および公的機関が、開発途上国の開発促進や福祉向上のために支出する、グラントエレメント25%以上の資金」

 というものだ。グラントエレメントとは、無償援助を100%とする資金調達コストの指標で、借款の場合は金利の安さで決まる。この定義は1972年にOECD開発援助委員会(DAC)で決められた。それから40年が経過している。中国はじめDACに加盟していない新興援助国が多数登場している現在、はたしてこれはいまでも、国際指標として妥当だろうか。

 

ODA定義の「落とし穴」

 日本のODAグラント比率(ODAコミットメント総額に占める無償援助の割合)は54.7%(2012年)で、DAC加盟国中最低水準にある。それは日本だけが大規模な開発金融(円借款)を有しているからだ。ODAはネット額でのみ測定されることになっているので、年によっては返済額が供与額を上回る円借款は、日本の援助総額のなかにほとんどカウントされていない。日本の貢献としてカウントされているのは無償援助ばかりなのに、グラント比率は低く算定されるというのは、おかしくはないだろうか。だいたい、グラント比率など意味のある指標だろうか。

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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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