饗宴外交の舞台裏 (89)

ローマ法王の葬儀で交わされた「握手」

「世界の首脳たちにとり、ひと時の外交デタント(緊張緩和)だった」と英タイムズ紙は書いた。ローマ法王ヨハネ・パウロ二世の葬儀のことである。 冷戦崩壊の陰の立役者であり、諸宗教の対話を主導し、死ぬ間際まで人権と平和の尊さを訴え続け、現代史に大きな足跡を残した同法王の葬儀には、世界の百を超える国が首脳レベルの代表を送り込んだ。 錚々たる顔ぶれの代表団を編成した国も少なくなかった。米国はブッシュ大統領、クリントン、ブッシュの前元大統領、ライス国務長官の四人。法王の祖国ポーランドはクワシニエフスキ大統領、元自主管理労組「連帯」議長で新生ポーランドのワレサ初代大統領ら四人。英国はチャールズ皇太子、ブレア首相ら四人。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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