見捨てられるウクライナ:「ロシアの言い分」と「独仏の欺瞞」

 ロシアがクリミア自治共和国の独立を承認、プーチン大統領はロシアに編入する条約をクリミア自治共和国首相らと結んだ。「冷戦の再来か」と騒がれる中で、ヨーロッパは国際社会の激動に翻弄されてなすすべもない。対話による事態収拾の目処はなく、当面武力介入もないので、事態はロシアの望む形になる可能性が高い。冷戦終結以後の世界をどうとらえるのかという議論は、「多極化」から「一極化」へと推移し、さらに新たな「二極化」ないし「多極化」の様相を一気に帯びてきた。新しい二極・多極体制は、「多極化時代」と呼ばれた1970年代以上に、競争力のあるBRICS諸国のような「準大国」を多くもつ複雑な構造となっている。西欧諸国は錯綜する新しい世界秩序の中で難しい立ち位置を強いられているが、その根底には旧態依然たる大国意識が残存している。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴(わたなべひろたか) 帝京大学法学部教授。東京外国語大学名誉教授。1954年生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程・パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校・ボルドー政治学院客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員教授、外交専門誌『外交』・仏語誌『Cahiers du Japon』編集委員長、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。最新刊に『アメリカとヨーロッパ-揺れる同盟の80年』(中公新書)がある。
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