代償も多い「クリミア併合」のバランスシート

 3月18日のプーチン大統領のウクライナ領クリミア併合演説は、議員らのスタンディングオベーションで歓迎され、涙を流したり抱き合う議員もいた。大統領が「世論調査では、95%の国民が併合を支持している」と述べたように、ロシア全土が一種のユーフォリア(陶酔)状態だ。ソチ五輪成功で高揚する民族愛国主義が異様なほど高まり、プーチン大統領への個人崇拝の動きもみられる。全国で併合祝賀集会が開かれ、北方領土の国後島でもクリミア連帯集会が行われた。メルケル独首相はオバマ米大統領に対し、「プーチン大統領は別世界に住んでいるようだ」と述べたらしいが、大統領から国民まで陶酔状態ではまともな交渉はできそうもない。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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