安保法制、集団的自衛権をめぐる議論が飛び交っている。軍事も安全保障も法律も専門外の私は黙ってみているのだが、ただ母校である早稲田大学が「安全保障関連法案の廃案を求める早稲田大学有志の会」発として、「安倍政権による憲法無視・国民無視の暴走に抗議し、安全保障関連法案の廃案を求めます」という声明を出したので、フェースブックの片隅に「付和雷同」とだけ書いた。

 早稲田大学の長谷部恭男教授が衆議院憲法審査会で「安保法制は憲法違反」との見解を述べたことが世論に強く影響を与えたようだから、他学よりも早稲田のなかは熱しているのかもしれないが、声明に名を連ねておられるさまざまな分野の研究者は、「学の独立」にふさわしい信条を揺るぎなくされているのだろうか。早稲田大学の声明には「日本を戦争する国に変えようとしている」と書かれてあるのだが、今の日本に武力をもって出ていく対象と狂気があるだろうか。自衛権の在り方をめぐる議論をそのように解釈するのが、彼らがいう「学の独立」なのか。私は、60年安保闘争は間違いだったと考えている。あの運動が安保条約改正の中身と意味を十分理解して展開されたものとは、到底思えないからである。同じ誤りは繰り返したくないものだ。

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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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