満面の笑みを浮かべた台湾の馬英九総統は、いささか硬い表情の中国の習近平国家主席と握手を交わしたあと、とっさにスーツの前ボタンをさっと外し、世界から集まった数百人の記者団に手を大きく振った。筋肉質で胸板の厚い馬氏はスーツが破れてしまうことを心配したからで、馬氏はボタンを外したまま、会談の会場に向かった。
60秒以上続いた握手
「中台分断後初」とされた歴史的な中台トップ会談で、馬氏の高揚ぶりは目立った。冒頭の公開発言の予定はそれぞれ5分。習氏は「我々は、血は水よりも濃い家族である」と使い慣れた決まり文句を淡々と語り、4分30秒できっちり語り終えた。一方、馬氏の話は5分で終わらなかった。仕切り役のシンガポール側は、発言途中で報道陣をシャングリラ・ホテル「Island Ballroom 」から追い出した。発言は結局、6分以上続いた。馬氏の話には、中国の古典『尚書』からの引用「非知之艱、行之惟艱」(知るに易く、行うに難し)など漢学教養がふんだんに盛り込まれ、中華民族主義者・馬英九の「中華の本家は我が中華民国にあり」という意気込みが伝わってきた。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン