英国メイ新政権:原発政策「急変の兆し」を注視せよ

新首相の決断に世界が注目している(C)AFP=時事

 

 英国の欧州連合(EU)離脱が決定して1カ月余りが経過した7月末、「愚か者」と罵声を浴びながら退陣したデイヴィッド・キャメロン(49)に代わりダウニング街10番地(英首相官邸)の住人となったテリーザ・メイ(59)は、着任後、極めて重要な決断を行った。「世界で最も高価な原発」(BBC放送)といわれた英ヒンクリーポイントC計画(南西部サマセット州)の承認キャンセルである。

 担当大臣である英民間企業・エネルギー・産業戦略相グレッグ・クラークが「計画の詳細を注意深く検討し、初秋までに結論を出す」とにわかにプロジェクト決定の延期を公式発表したのが7月28日夜。数時間前に事業主体になる「仏電力公社(EDF)」が賛否の拮抗した取締役会でかろうじて計画実施を決議したばかりであり、翌29日には建設地のサマセット州でEDFの共同出資者となる「中国広核集団(CGN)」幹部らを招いた式典が予定されていた。まさに“ドタキャン”。いったい何が起こったのか。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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