風が時間を (16)

まことの弱法師(16)

執筆者:徳岡孝夫 2017年7月23日
エリア: 北米 アジア

 日本が対米戦争の口火を切ったのは1941年12月7日(現地時間)の帝国海軍による真珠湾奇襲攻撃だった。誰でも知っている歴史上の事実である。

 だが米太平洋艦隊が壊滅させられたとの報に最も喜んだのはロンドンのウィンストン・チャーチル英首相だった。

 米国の参戦だけが大英帝国を救う唯一の道だったからである。

 ドイツの機甲師団に席巻された欧州は英国を除いてほぼ完全にヒトラーの手に落ち、救う道はただ1つ、アメリカの参戦だけだったからである。日本軍による開戦はその意味で大英帝国を救う唯一の戦略的展開だった。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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