連載小説 Δ(デルタ)(33)

執筆者:杉山隆男 2017年12月3日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

極秘裏にイラク戦争の戦場に派遣し、米軍部隊にまぎれこませて実際の戦闘に参加させた陸上自衛官からなる、絶対秘密の部隊「デルタ」。その存在を最高指揮官たる総理大臣に指摘された際は辞職を覚悟した陸上幕僚長だったが、センカクへの出動を命ぜられ、「頼む」と言われたとき、その顔に精気がよみがえった。

 

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 エレベーターで5階に上がると、枯山水を模した吹き抜けの中庭はすでにライトアップされていた。バックに配した竹林に下から幾筋もの光が当てられ、竹の葉が織りなす影の紋様がますます抽象画のような非日常の空間をつくりだしている。その借景を横目にしながら門馬は廊下を進み、官房長官ではなく総理の執務室に向かった。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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