
まだ髷を結っていた頃の藤原あき。正確な撮影年は不詳。この後、あきは波瀾万丈の人生を送ることになる(自伝『雨だれのうた』(酣燈社)より)
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学習院女学部の上級となった中上川あきは、膨らみをおびてきた胸とは裏腹に着物の上からもまだ少女らしい華奢な体つきがわかる。
背が高く大人びた目鼻立ち、常に堂々とした物腰は、校内でもかなり目立つ存在だった。先生が黒板に書く問題もすらすらと解いてしまい、級友たちが頭をひねり考えているのを尻目に、「中上川さんもう出来たかね?」と帳面を見にきた先生とたわいもない話をする。

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