「君主号」の世界史 (14)

「皇帝(インペラトール)」と「帝国(インペリウム)」

執筆者:岡本隆司 2018年9月29日
エリア: ヨーロッパ
ローマ美術の代表作と称される「プリマポルタのアウグストゥス」。バチカン美術館蔵

 

「命令権(インペリウム)」の濫立を収束し、「平和」を現出したアウグストゥス。しかしかれの事業は、それでおわらない。むしろそこからはじまった。かれはまだ、30代前半なのである。

アウグストゥスの事業

 平和の回復なら、前例に事欠かない。ライヴァルに勝利し、リーダーシップを確立するだけなら、スラもカエサルも、その天才でやってのけたことである。しかしそれが永続するとは限らない。かれら本人が歿すれば、またぞろ「内乱」がおこった。せっかく一元化したリーダーシップ・「命令権」が、拡散紊乱をくりかえしたからである。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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