「平和構築」最前線を考える (10)

漂流する「国際刑事裁判所」と日本の立ち位置(下)

執筆者:篠田英朗 2019年5月30日
タグ: 日本
アフガン戦争犯罪捜査拒絶の決定を下した3人の判事の中に、昨年就任した赤根智子判事もいた(ICCホームページより)

 

 現在までのところ、実際にICC(国際刑事裁判所)に1度加入しておきながら脱退してしまった国は、ブルンジとフィリピンの2カ国である。すでに述べたように、ブルンジ脱退の際には、効力発生の直前に正式捜査の開始が決定された。これに対してフィリピンの場合には、何も起こらないまま、2019年3月17日に静かな脱退が果たされた。もちろんその背景には、ブルンジに対してはすでに予備捜査が進んでいたが、フィリピンに対しては全く進んでいなかった、という事情がある。

カテゴリ: 政治 社会 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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