「平和構築」最前線を考える (18)

「ソレイマニ司令官殺害」は違法「ドローン軍事使用」国際法上の問題点

執筆者:篠田英朗 2020年7月15日
エリア: 中東 北米
ソレイマニ司令官を攻撃したとされるドローン攻撃機と同型のMQ-9 Reaper (C)AFP=時事

 

 国連人権理事会特別報告者のアグネス・カラマード氏が、今年1月のアメリカによるイランのガーセム・ソレイマニ司令官殺害事件について、国際法違反だと断ずる報告書を7月9日に提出したことがニュースになった。

「イスラム革命防衛隊」において特殊作戦を行う「ゴドス部隊」(Quds Force)を率いていたソレイマニ司令官がイラクのバグダッド空港に到着したところを、アメリカがドローン(最新型のGeneral Atomics MQ-9 Reaper)から発射したミサイルで攻撃した。そして同伴していたイラクの「カタイブ・ヒズボラ」の指導者アブ・マフディ・ムハンディス氏とともに、同司令官を殺害したのである。この事件を、カラマード氏は、国際法違反の行為であったと断じたのだ。

カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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