新・マネーの魔術史:未来篇 (54)

「分散型ID」は現在の仕組みとどう違うか?

執筆者:野口悠紀雄 2020年10月8日
エリア: その他
リブラ公式HPより

 

 伝統的社会では本人証明は必要なかったが、都市化によって匿名化が進み、本人証明が難しくなった。インターネットではさらに難しい。このため、預金不正引き出しなどの事故が起きている。これに対応するための現在の仕組みはID・パスワード方式だが、さまざまな問題がある。そこで、「分散型ID」が提案されている。さらに、ブロックチェーンを用いる「分散型の公開鍵基盤」が開発されている。

都市が人間を自由にした

 伝統的社会の規模が小さいコミュニティでは、誰もが他の人のことを良く知っていた。誰もが互いの顔を知っているだけでなく、生活のあらゆる側面が筒抜けになっており、各人の普段の行いや、これまでの履歴を知っている。だから、誰だかすぐに分かる。本人証明のために特別の手段を設ける必要はなかった。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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