【特別連載】引き裂かれた時を越えて――「二・二六事件」に殉じた兄よ(14)勝雄の結婚、吹き寄せる嵐

執筆者:寺島英弥 2021年5月16日
タグ: 日本
エリア: アジア
ありし日の対馬勝雄中尉(波多江さん提供)

 愛知県豊橋市のJR豊橋駅前から豊鉄に乗り、3つ目の駅が愛知大学前。運動部の学生の声が響くグラウンド、馬術部の馬場の前を過ぎると、松の巨木と出会う。根は大蛇のとぐろのように渦巻き、幹は二股に分かれ、背後の体育館の屋根をはるかに超えて枝を伸ばす。1927(昭和2)年、この地に開校した陸軍豊橋教導学校を行幸した昭和天皇の記念植樹の松と、遺構である旧大講堂だ。いまはベージュと茶に塗られた建物の入り口は、大きく武骨で頑丈そうな格子の扉を持ち、若者たちのキャンパスの風景にどこか異質な時代感をもってたたずむ。

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執筆者プロフィール
寺島英弥(てらしまひでや) ローカルジャーナリスト、尚絅学院大客員教授。1957年福島県相馬市生れ。早稲田大学法学部卒。『河北新報』で「こころの伏流水 北の祈り」(新聞協会賞)、「オリザの環」(同)などの連載に携わり、東日本大震災、福島第1原発事故を取材。フルブライト奨学生として米デューク大に留学。主著に『シビック・ジャーナリズムの挑戦 コミュニティとつながる米国の地方紙』(日本評論社)、『海よ里よ、いつの日に還る』(明石書店)『東日本大震災 何も終わらない福島の5年 飯舘・南相馬から』『福島第1原発事故7年 避難指示解除後を生きる』(同)、『二・二六事件 引き裂かれた刻を越えて――青年将校・対馬勝雄と妹たま 単行本 – 2021/10/12』(ヘウレーカ)、『東日本大震災 遺族たちの終わらぬ旅 亡きわが子よ 悲傷もまた愛』(荒蝦夷)、3.11以降、被災地で「人間」の記録を綴ったブログ「余震の中で新聞を作る」を書き続けた。ホームページ「人と人をつなぐラボ」http://terashimahideya.com/
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