引き裂かれた時を越えて――「二・二六事件」に殉じた兄よ

【特別連載】引き裂かれた時を越えてーー「二・二六事件」に殉じた兄よ(16・完)刑務所に集う家族、最後の日々

執筆者:寺島英弥 2021年6月13日
タグ: 日本
エリア: アジア
ありし日の対馬勝雄中尉(波多江さん提供)

 豊橋教導学校の教え子を率いての西園寺公望襲撃計画が挫折し、対馬勝雄中尉(青森出身)=享年28歳=はやむなく同僚の竹島継夫中尉と2人、東京の同志たちの蹶起に参加すべく夜汽車に乗った。1936(昭和11)年2月26日未明の首都は大雪の中だった。蹶起は何も知らぬ家族をも巻き込んだ。

新聞号外に兄の名前

 そのころ、勝雄の妹たまさん=当時22歳。昨年6月、弘前市で104歳で死去=は横浜に給料の良い洋裁の仕事を見つけ、元町の釣り船屋の2階を借りて通った。2月26日、時ならぬ新聞号外に街の人々は騒然とし、たまさんは胸さわぎを覚えて、長く同居した東京・四谷箪笥町の姉タケの下宿に駆け込んだ。青年将校らが午前5時ごろ、首相官邸などを襲撃し、岡田啓介首相や斎藤実内大臣、渡辺錠太郎教育総監が即死したという。

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執筆者プロフィール
寺島英弥 ローカルジャーナリスト、尚絅学院大客員教授。1957年福島県相馬市生れ。早稲田大学法学部卒。『河北新報』で「こころの伏流水 北の祈り」(新聞協会賞)、「オリザの環」(同)などの連載に携わり、東日本大震災、福島第1原発事故を取材。フルブライト奨学生として米デューク大に留学。主著に『シビック・ジャーナリズムの挑戦 コミュニティとつながる米国の地方紙』(日本評論社)、『海よ里よ、いつの日に還る』(明石書店)『東日本大震災 何も終わらない福島の5年 飯舘・南相馬から』『福島第1原発事故7年 避難指示解除後を生きる』(同)。3.11以降、被災地で「人間」の記録を綴ったブログ「余震の中で新聞を作る」を書き続けた。ホームページ「人と人をつなぐラボ」http://terashimahideya.com/
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