「日中国交正常化50周年」に目指す「したたかな」外交に肝心なもの

執筆者:宮本雄二 2022年1月31日
エリア: アジア
岸田首相は対中国で「したたかな外交が求められる」との認識を示す(21年10月8日、中国の習近平国家主席と電話会談を行った岸田氏) ⓒ時事
日中関係発展の前提だった「良好な米中関係」は存在しない。日本社会の対中不信と恐れは強まり、日本経済の重要性も低下した。だが、時にはこうした環境自体を変えていくのが外交だ。50年間の基軸、競争的共存関係の構築をさらに前へと進めるために岸田内閣は何をすべきか。

 1972年9月29日、日中国交正常化が実現した。米中が、ソ連に対する共同戦線を張るために180度の方針転換をした結果、それが可能となった。日本の外交空間は確実に拡大し、国力の増大を背景に日本のアジア外交も勢いを増した。だが、それからの日中関係は、日米共通の台湾問題をはじめ、歴史認識問題と尖閣問題により揺さぶられ続けた。

 日中国交正常化は、戦争を戦った者同士の「握手」であった。あの世代の日本の指導者には大なり小なり、中国に対する「贖罪意識」はあった。毛沢東をはじめとする中国の指導者には西洋列強にアジアで唯一対抗した日本に対するそこはかとない敬意があり、特に周恩来には日本滞在経験から来る「感情」があった。80年代までの日中関係は「ウエット」な関係だったのだ。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宮本雄二 みやもと・ゆうじ 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日中友好会館副会長、日本日中関係学会会長。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』などがある。
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