政治的なるものとは~思索のための1冊 (5)

政治とは悪さ加減の選択―丸山眞男『政治の世界 他十篇』(岩波文庫)

執筆者:橋本五郎 2022年9月11日
タグ: 日本 イギリス
「政治とは悪さ加減の選択」と語った福沢諭吉
日本を代表する政治学者であり、政治思想史家だった丸山眞男は、政治への過度の期待を戒める一方、政治的無関心にも警鐘を鳴らした。戦後まもない1947年から13年間にわたって書かれた11篇。そこには、日本を「真の民主主義国家」にしようという情熱が宿っている。

 

 戦後最大の社会科学者、丸山眞男には2つの顔があった。戦前の天皇制国家の病理を完膚なきまでに解剖した『現代政治の思想と行動』(未来社)などの著者としての政治学者の顔と、荻生徂徠に「政治」を発見した『日本政治思想史研究』(東京大学出版会)などの政治思想史研究者としての顔である。丸山自身は前者を「夜店」と呼び、後者を「本店」と名付けた(「夜店と本店」『丸山眞男座談』9)。

 その2つとも常人にはとても到達できない高峰だが、丸山の存在自体を真っ向から否定したのが、評論家吉本隆明である。吉本は「一橋新聞」で丸山批判を展開したが、書き出しが衝撃的だった。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
橋本五郎(はしもとごろう) 『読売新聞』特別編集委員。1946年秋田県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、読売新聞社に入社。論説委員、政治部長、編集局次長を歴任。2006年より現職。『読売新聞』紙上で「五郎ワールド」を連載するほか、20年以上にわたって書評委員を務める。日本テレビ『スッキリ』、読売テレビ『ウェークアップ!ぷらす』、『情報ライブミヤネ屋』ではレギュラーコメンテーターとして活躍中。2014年度日本記者クラブ賞を受賞。著書に『範は歴史にあり』(藤原書店)『「二回半」読む――書評の仕事1995-2011』(以上、藤原書店)『不滅の遠藤実』(共編、藤原書店)『総理の器量』『総理の覚悟』(以上、中公新書ラクレ)『一も人、二も人、三も人――心に響く51の言葉』(中央公論新社)『官房長官と幹事長――政権を支えた仕事師たちの才覚』(青春出版社)など多数。
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