英「スナク新政権」前途多難の船出(下)ジョンソンの「茶番」を制したインド系エリート

執筆者:国末憲人 2022年10月28日
エリア: ヨーロッパ

新首相に就任したスナク氏に立ちはだかる難題(C)EPA=時事
トラス首相が辞任を表明するなり“救世主”の如く現れたのはまさかのジョンソン前首相……。この「悲劇」、転じて「茶番」を制したスナク新首相は、目下の経済安定化に加え、「ジョンソン劇場」で低迷の一途を辿ってきた保守党の党勢回復という難題を突き付けられている。(前編はこちらからお読みいただけます)

 

まるで救世主の帰国

 ボリス・ジョンソンは、カリブ海で家族とバカンスを過ごすのが大好きである。リズ・トラス政権が新経済政策「成長計画」、通称「ミニ予算」をめぐる渦中にあった間も、ジョンソンは3人目の妻キャリー夫人や2人の子どもとともに、ドミニカ共和国に2週間にわたって滞在していた。

 しかし、10月20日にトラス辞任が決まった途端、ジョンソン復活に期待をかける声がロンドンで相次いだ。保守派の重鎮で民間企業相のジェイコブ・リース=モグは22日、「次週に彼が首相官邸に復帰すれば、金融市場も収まるだろう」と述べた。国防相のウォレスや元内相のパテルも、ジョンソン支持を表明した。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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