英「スナク新政権」前途多難の船出(上)トラスの「悲劇」はなぜ起きたのか

執筆者:国末憲人 2022年10月28日
エリア: ヨーロッパ
10月20日に辞意を表明したトラス氏(C)EPA=時事
お粗末な経済政策で首相を辞任したトラス氏に代わり、経済財政政策に定評のあるスナク氏が新首相に就いた。保守党の「ジョンソン一強」が招いた後継者不在の中で「仕方なく」選ばれたトラス氏の「悲劇」を振り返る。(後編はこちらからお読みいただけます)

 

「茶番」の末に、英国新政権が船出する。

 はじまりはリズ・トラスの「悲劇」だった。

 就任から1カ月半、英国史上最短記録を塗り替えて、トラスが10月20日に首相辞任を表明した。すでに市民の支持も、与党内の支えも失っていた。調査会社「レッドフィールド・アンド・ウィルトン・ストラテジーズ」が公表した世論調査によると、首相支持率は最終的に6%にまで落ち、不支持は83%に達した。

 不支持の背景では、党勢の衰えを反映した党内の人材不足に加え、欧州連合(EU)離脱の余波や、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高などが複合的に作用していた。トラス自身の舵取りにも問題があったものの、英国と保守党の病理が凝縮された結果でもあった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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