ロシア・ウクライナ戦争:「欧州の結束」の実態を読み解く

執筆者:鶴岡路人 2022年11月24日
タグ: EU ウクライナ
エリア: ヨーロッパ
ウクライナへの支援パッケージについて記者会見する欧州委員会のヨハネス・ハーン委員[11月9日、ブリュッセル](C)EPA=時事
「足並みの乱れ」が話題になりがちな欧州だが、ロシアとの地理的関係など利害の相違が出発点にあることを考えれば、EUが対露制裁と対ウクライナ支援に合意を積み重ねた事実は見逃せない。「欧州の結束」のゆくえを考える上で見落とされがちな重要ポイントを検証する。

   ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、欧州の結束が問われ続けている。「欧州は結束しているのか?」、「欧州の足並みは揃っているのか?」という問いへの答えは、期待値によって変わる。欧州は完全に結束すべきだしそれが可能だという出発点に立てば、現実の欧州は足並みの乱ればかりが目につく。他方、欧州には複雑な利害の相違があり、足並みはいつも乱れているという出発点であれば、現実の欧州の結束度合いは画期的ですらある。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
鶴岡路人(つるおかみちと) 慶應義塾大学総合政策学部准教授、戦略構想センター・副センタ―長 1975年東京生まれ。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院法学研究科、米ジョージタウン大学を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号取得(PhD in War Studies)。在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、米ジャーマン・マーシャル基金(GMF)研究員、防衛省防衛研究所主任研究官、防衛省防衛政策局国際政策課部員、英王立防衛・安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書、2023年)など。
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