【Exclusive】アメリカの核研究者を標的にしたロシア系ハッカー集団「コールド・リバー」

ロシアのハッカー向け“地下ニューズレター”が表示された画面 (C)REUTERS/Dado Ruvic/Illustration
プーチン大統領が核兵器の使用を示唆した昨年8月から9月にかけて、アメリカの核研究施設がロシア系ハッカー集団「コールド・リバー」からサイバー攻撃を受けていたことが明らかになった。コールド・リバーとは如何なる組織なのか。攻撃の痕跡を辿ったところ、ロシアに住む35歳のIT技術者に行き着いた。

[ロンドン/ワシントン発(ロイター)]「コールド・リバー」と呼ばれるロシアのハッカー集団が、2022年夏にアメリカの3つの核研究施設を標的にしていたことが明らかになった。ロイターがインターネット上の記録を調査し、5人のサイバーセキュリティ専門家に見せたところ、デジタル指紋をもとにコールド・リバーの関与が裏付けられた。

   コールド・リバーは昨年8月から9月にかけて、ちょうどウラジーミル・プーチン大統領が領土を守るために核兵器を使う用意があると示唆した時期に、ブルックヘブン国立研究所(BNL)、アルゴンヌ国立研究所(ANL)、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)に対してサイバー攻撃を仕掛けていた。ネット上の記録によると、ハッカー集団は研究所のものに似せた偽のログインページをつくり、科学者たちへメールを送るなどして、パスワード情報を盗もうとしていた。

   この3つの研究所が狙われた理由や、実際にシステムに侵入されたかどうかはわかっていない。BNLの広報担当者はコメントせず、LLNLからも返事はなかった。ANLの広報担当者は米エネルギー省に対応を任せたが、米エネルギー省からコメントは得られなかった。

 西側政府高官とサイバーセキュリティ専門家によると、コールド・リバーはロシアがウクライナに侵攻して以来、ウクライナを支持している国々へのハッキングを激化させてきた。アメリカの研究所に対するサイバー攻撃が起きたのは、IAEA(国際原子力機関)の専門家がヨーロッパ最大級の原子力発電所であるウクライナのザポリージャ原発を視察し、爆撃による放射能災害のリスクを評価するために、ロシア軍の支配地域に入った時のことだった。

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