「ワグネル」と「カディロフツィ」――誇張されたロシア異形の戦闘部隊

執筆者:真野森作 2023年2月20日
タグ: ロシア
エリア: ヨーロッパ
ワグネルを創設したことを昨年9月に認めたプリゴジン氏(C)AFP=時事
ロシア・ウクライナ戦争から1年、想定外の苦戦が続くロシア側では、正規のロシア軍とは一線を画す異形の戦闘部隊の存在感が増している。オリガルヒのプリゴジンが創設した民間軍事会社「ワグネル」とチェチェン共和国のカディロフ首長率いる私兵軍団「カディロフツィ」だ。プーチン大統領に近いプリゴジンとカディロフは公然とロシア軍の戦略を批判し、自らの戦果をアピールするが、その実像は——。『ルポ プーチンの破滅戦争――ロシアによるウクライナ侵略の記録』(ちくま新書)を1月に刊行した筆者が考察する。

 

 2月24日で開戦1年となるロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナ側の強い抵抗と米欧の兵器供与によって、ロシア軍の想定外の苦戦が続いている。それでもウクライナ領の約2割を占領したロシア側は攻勢の手を緩めず、戦争の終結は見通せない。まるで20世紀前半に戻ったかのような大規模な侵略戦争の中で、注目を集める存在の1つがロシア側の異形の戦闘部隊だ。

 それは、新興財閥主(オリガルヒ)のエフゲニー・プリゴジンがオーナーを務める民間軍事会社「ワグネル」と、露南部チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長の傘下にあるチェチェン人部隊「カディロフツィ」である。それぞれを率いる2人は共にウラジーミル・プーチン大統領に近く、国内で主戦強硬派として台頭した。ウクライナ軍の反転攻勢が続いた昨年秋などには、軍高官の戦略の不手際を激しく批判して注目を集めた。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
真野森作(まのしんさく) 毎日新聞記者。1979年生まれ、東京都出身。一橋大学法学部卒。2001年、同社入社。北海道支社報道部、東京社会部、外信部、ロシア留学を経て、13~17年にモスクワ特派員として旧ソ連諸国をカバー。20~23年にはカイロ特派員として中東・北アフリカ諸国を担当し、ロシアのウクライナ侵攻も現地取材した。単著に『ルポ プーチンの戦争―「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか』(筑摩選書、18年12月刊)、『ポスト・プーチン論序説 「チェチェン化」するロシア』(東洋書店新社、21年9月刊)、『ルポ プーチンの破滅戦争―ロシアによるウクライナ侵略の記録』(ちくま新書、23年1月刊)がある。
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