北朝鮮が「火山31」で手にする「戦術核による反撃能力」

IN-DEPTH【ニュースの深層】

執筆者:朴眞煥(ぱく・じんふぁん) 2023年4月10日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
短距離弾道ミサイルの核戦力化が進んでいるとKODEFは分析[2023年3月27日撮影とされ、場所は不明](C)AFP=時事/KCNA VIA KNS
3月28日に写真公開された小型核弾頭「火山31」によって、北朝鮮は「戦術核の小型化と標準化」に成功したとの指摘がなされている。実際、ミサイル能力が格段に向上しつつある中で、戦術核によって反撃能力を確保しようとするのは合理的だ。そして、その性能確認や性能向上のために核実験に踏み切る可能性が高いという。

   北朝鮮の国営メデイアは3月28日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が「核兵器研究所」を視察する様子を9枚の写真と共に報じた。核弾頭と見られるものの実物の写真も公開された。

   北朝鮮のミサイルを専門に分析する韓国のシンクタンク韓国国防安保フォーラム(KODEF)は、北朝鮮が核弾頭の小型化と標準化に成功し、量産体制に入った可能性が高いとしている。実際に軍事的な衝突が起きた際、直ちに使うことを想定する「兵器」に核を搭載する能力を高めている現状がうかがえる。

   写真に写った説明書きから、新たな核弾頭は「火山(ファサン(火山)31」と名付けられた模様だ。以下、筆者が入手したKODEFの分析資料をもとに、その詳細をレポートする。

「直径500㎜」というサイズの理由

   金正恩の身長や写真に映っている軍幹部の身体的特徴に関する情報から、火山31は直径が約500mm、長さが約900mmの小型核弾頭だ(資料1)。

資料1

   KODEFの関係者は、なぜ、北朝鮮がこのサイズの核弾頭を開発したのかに注目する必要があると指摘する。……

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カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
朴眞煥(ぱく・じんふぁん) 報道番組ディレクター、ジャーナリスト。1975年韓国ソウル生まれ。韓国漢陽大学大学院卒業後、作戦将校として空軍に入隊(元空軍大尉)。2005年来日、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程中退、専門は文化人類学。韓国における軍事文化、徴兵拒否運動、反戦平和運動について研究を続け、筑波大学研究員を経て、2016年から現職(主に朝鮮半島情勢、日韓関係を取材しテレビやラジオ番組に出演中)。著作に「韓国の大学における軍事文化と日常-徴兵制をめぐる言説と予備役、現役、女子学生の実践」(『コンタクト・ゾーン』2:89-108.京都大学人文科学研究所)、「韓国社会の徴兵拒否運動からみる平和運動の現状」(所収:田中雅一編『軍隊の文化人類学』風響社)、「異文化で自文化を研究すること、語ること」(所収:神本秀爾・河野世莉奈・宮本聡編『ヒューマン・スタディーズ 世界で語る/世界に語る』集広舎)など。
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