「分断化の時代」の経済政策「イエレン=サリバン・ドクトリン」が示す危機感

執筆者:鈴木敏之 2023年5月30日
タグ: 経済安全保障
エリア: アジア 北米
イエレン長官は4月20日の講演で「我々は中国とのデカップリングを目指していない」と語った (C)AFP=時事
米政府高官から対中デカップリングの軌道修正を示唆する発言が相次いでいる。その背景には、分断化が進む世界経済における成長率低下、異次元の高インフレ、基軸通貨ドルの動揺といったマクロ経済構造の巨大な変化に対する危機意識が存在する。分断化それ自体の早期修復は期待できない。日本の政策決定者もこの現実をふまえて動く必要がある。

 

 ドナルド・トランプ大統領の時代に先鋭化した米中対立は、ジョー・バイデン政権になっても緩まなかった。リーマンショックによるGFC(Global Financial Crisis、国際金融危機)の際は、G20の首脳会合が繰り返されて、世界中が手を携えて対応にあたったが、COVID-19のパンデミックに際して、そうした国際協力の高まりはなかった。そして、ロシアのウクライナ侵攻が起こって本格的な分断の時代となり、それが早期に修復されそうにない現実を直視しなければならなくなっている。分断化は経済、金融市場にも大きな変化をもたらす。その変化に直面して、欧米の政策決定者たちは、新しい経済運営の課題を見極め、対応のグランドデザインを描き始めている。

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カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
鈴木敏之(すずきとしゆき) グローバルマーケットエコノミスト。1979年慶大経卒、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、ロンドンやニューヨークに駐在。 FRBウオッチャーとして知られ、米金融政策に精通する。
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