【Exclusive】ロシア産「金」の貿易拠点化「UAEに指摘される懸念」

2023年6月3日
タグ: ロシア
エリア: ヨーロッパ
何百もの宝飾店が軒を連ねドバイの「ゴールド・スーク」[2018年3月24日](C)REUTERS/Christopher Pike
UAE(アラブ首長国連邦)は金産業が盛んだ。純金を輸入して金塊や宝飾品に加工し、輸出する。この国に今、制裁によって輸出ルートを断たれたロシア産の金が集まっている。UAEで再鋳造されたロシア産の金が世界の市場に流れ込んでいる可能性も。

[ロイター]ウクライナ侵攻に伴う対ロシア制裁によって、アラブ首長国連邦(UAE)がロシア産の金の新たな貿易拠点となっている。侵攻以降の1年間に行われた1000件近い金の輸出記録の詳細を含む通関記録によると、UAEは43億ドル(約6000億円)に相当する75.7トンの金塊をロシアから輸入した。前年2021年の輸入量1.3トンに比べると大幅な増加だ。

 UAEに続く輸入国は中国とトルコで、2022年2月24日から今年3月3日までの間に、それぞれ20トンずつ輸入している。UAEと合わせた3カ国で、この期間のロシアによる金輸出の99.8%を占めている。

 従来、ロシア産の金は金取引・保管の拠点であるロンドンに輸送されてきたが、侵攻以降、多くの多国籍銀行、物流会社、希少金属精製所はロシア産の金の取引を中止した。ロンドン貴金属市場協会(LBMA)は2022年3月7日以降に鋳造されたロシア産金塊の取引を禁止し、同年8月末までに、イギリス、EU(欧州連合)、スイス、アメリカ、カナダ、日本がロシア金塊の輸入を禁止した。

 しかし、ロシアは対ロ制裁を科していないUAEやトルコ、中国といった国に新たな市場を開拓したようだ。経済協力開発機構(OECD)の金調達専門家、ルイス・マレチャルは、ロシア産の金が再鋳造され、出所を隠して欧米の市場に流れこむ危険性があるとして、以下のように語る。

「ロシア産の金塊がどこかで再鋳造され、それを銀行やトレーダーが買い入れて市場に売却するリスクがある。エンドバイヤーが制裁体制を遵守するならデューデリジェンスが不可欠だ」……

カテゴリ: 経済・ビジネス
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