[マニラ発/ロイター]たいがいの教会の近くにはバスケのコートが見つかる。そして、1億1200万という人口の大半をカトリック教徒が占めるフィリピンでは、墓地の敷地内から下水道のそばに至るまで、こうした教会はあちこちにある。そんなフィリピンがインドネシア及び日本とともに、9月10日まで催されるFIBAワールドカップの共催国となったのだ。
「大会がこの国で開催されるので興奮しています。NBA(全米バスケットボール協会)の選手もたくさん観られので楽しみです」。会場となるモール・オブ・アジア・アリーナの近くで、大学生のジェイムズ・フロイラン・アルメダさんは語った。
32カ国が参加するこの大会をフィリピンが制するのは無理にしても、いくつかの試合では勝ちを拾える、とアルメダさんは付け加えた。FIBAの世界ランキングではフィリピンの男子が40位、女子は42位。ちなみに1位は男子がスペイン、女子はアメリカだ。
バスケットボールがフィリピンに伝わったのは、アメリカの植民地だった1910年代。アメリカ人教師が公立学校教育にバスケットを導入したもので、当初は女子だけが対象だった。
バスケットの魅力は、そのシンプルさゆえに100年経っても色褪せない、とベテランのスポーツキャスター、セブ・サルメンタ氏は表現する。
「バスケットボールとの恋に終わりはないんです。まずバックボードを持ってきて、リングになる針金を見つける。それらを壁に取り付ければ、すぐプレーできる。そんな光景が国じゅうの通りや路地で数えきれないほど繰り返されてきました」
民間の世論調査会社ソーシャル・ウェザー・ステーションズ(SWS)の最近の調査によれば、フィリピン国民の半数近くは暮らしが貧しいと感じているという。バスケットボールは、この発展途上国のあらゆる社会階層に浸透している。
ジェシー・コンデさんは、トンドのスラム街で暮らすウェイスト・ピッカー(発展途上国の路上や廃棄物処分場で、ビン・缶などの有価物を回収・売却して生計をたてている人)たちが設えたバスケットコートの常連だ。家や学校で辛いことがあると決まってバスケットに興じるという。
上半身裸で裸足というチームメイトとともに、通常1試合につき1人50ペソ(約129円)を賭け、勝者はその賞金で皆に軽食をおごることが多い。
「コートに立ったらもう、むしゃくしゃしたこともみんな忘れるね」と18歳のコンデさんは言う。自宅には、NBAゴールデンステート・ウォリアーズのジャージを着たイエス・キリストの像を飾ってある。
最も安いチケットでも最低日給の半分近い。……
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