ホンダ、GMとの「EV共同開発」頓挫で「内燃機関車2040年撤退」に暗雲
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ホンダとゼネラルモーターズ(GM)が量販価格帯の電気自動車(EV)の共同開発を中止したことが明らかになった。両社が開発資金を分担するとともに、世界各国にある両社の工場で生産することで、コスト競争力の高いEVをグローバルで供給、先行するBYDなどの中国系自動車メーカーやテスラなどの新興自動車メーカーに対抗する計画だったが、EV市場の激変で方向転換を余儀なくされた。とくにホンダは出遅れていたEV事業に関してGMを頼りにしてきただけに、EV戦略全体の見直しを迫られる。
値引き競争の激化で採算が悪化
ホンダはGMから大型SUV(多目的スポーツ車)タイプのEVをベースにしたOEM(相手先ブランドによる生産)車の供給を受けて、2024年に「プロローグ」の車名で北米市場に投入する計画を持つなど、GMとの間でEV関連事業の連携を強化してきた。
量販タイプのEVの共同開発はこの一環で、2022年4月に発表したばかり。多額の投資が必要なプラットフォーム(車台)を共通化し、GMが開発した駆動用バッテリー「アルティウム」を搭載したEVを3万ドル(約450万円)程度の価格帯で、2027年以降、世界各市場で両社それぞれのブランドで展開する予定だった。
ホンダ、GM双方にとってEV戦略の要となるはずだった量販EVの共同開発計画を中止したのは「独自開発した方が合理的と判断したため」とホンダは説明する。背景にあるのがEVを巡る環境の急激な変化だ。
中国や欧州では手厚い補助金の効果もあってEV市場は急拡大してきたが、ここにきて成長が鈍化している。とくに世界最大のEV市場である中国では、2022年のNEV(新エネルギー車)販売台数が前年比でほぼ倍増したのに対して、2023年1~9月は前年同期比37.5%増にとどまっている。市場の成長にブレーキがかかっているだけではない。販売競争の激化で値引き合戦の様相を呈し、自動車メーカーの採算が悪化している。
中でもGMは主力市場である北米でテスラのEVに売り負けており、EVの在庫が大幅に増えている。北米市場ではEVモデルを拡充しているフォードも苦戦を強いられており、EV事業部門の赤字が続いている。こうした中、GMは収益確保を最優先に、EV事業を抜本的に見直すことにした。EV市場のこれまで通りの成長が見通せないことを前提に、ホンダとの共同開発による量産効果よりも、収益性の高い量販EVを単独で開発した方が得策と判断したようだ。
GM連携は三部社長の肝煎りだけに……
こうしたGMの経営判断にホンダは困惑している。ホンダは2040年までに内燃機関車の販売から撤退し、EVと燃料電池車(FCV)だけに絞り込むことを表明しており、GMと共同開発する量販EVは、ホンダが掲げる2030年までにEVの生産台数を年間200万台にする計画の主力モデルとなる見込みだった。
今後、ホンダは量販EVを独自開発して中国や欧州市場に投入することになるが、計画達成が大幅に遅れるのは避けられない。
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