【前回まで】台湾潜水艦を返還させた都倉だが、外相と官房長官から激しく叱責される。まして記者会見など言語道断――彼らの命に反して、都倉は華首相と共に記者たちに相対した。
Episode5 四面楚歌
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都倉は、中南海の会見場で、華の隣に座っていた。事態が想定外すぎて、理解が追いついていない。
それでも、ここは重要な場面だ。気を引き締めなおして、自身と華の発言を反芻するうちに、自身の発言に慄[おのの]いた。
「中国軍が、台湾の潜水艦を救助した」――私は、臆面もなくそう言い放った。
どう考えても「拿捕した」としか言いようがない状況なのに。
さらにあろうことか、強引に台湾の潜水艦を奪取した中国に、私は謝辞を述べてしまった。
これでは、まるで国賊か、詐欺師か、いや中国の回し者じゃないか。
外務大臣は、絶対に華と二人で記者会見をやってはならぬと言い、官房長官は、記者会見したら「国会議員をお辞めなさい」と突き放した。
なのに、彼らの忠告、いや脅迫を振り切って、私は自分の信じる選択をした。
そうだ。日本にとって最悪のシナリオは、台湾を挟んで米中が戦争を起こすことだ。可能性は、限りなく低いと言われているが、それでもゼロではない。
そして、中国は、その現実性を試すために、とんでもない手を打ってきた。
都倉の戸惑いなどお構いなしに、日中のメディアからの質疑応答が始まっていた。……
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