オペレーションF[フォース] (44)

連載小説 オペレーションF[フォース] 第44回

執筆者:真山仁 2023年12月23日
タグ: 日本
エリア: その他
(C)AFP=時事[写真はイメージです]
国家存続を賭けて、予算半減という不可能なミッションに挑んだ「オペレーションZ」。あの挫折から5年、新たな闘いが今、始まる。防衛予算倍増と財政再建――不可避かつ矛盾する2つが両立する道はあるのか? 目前の危機に立ち向かう者たちを描くリアルタイム社会派小説!

【前回まで】台湾潜水艦を返還させた都倉だが、外相と官房長官から激しく叱責される。まして記者会見など言語道断――彼らの命に反して、都倉は華首相と共に記者たちに相対した。

 

Episode5 四面楚歌

 

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 都倉は、中南海の会見場で、華の隣に座っていた。事態が想定外すぎて、理解が追いついていない。

 それでも、ここは重要な場面だ。気を引き締めなおして、自身と華の発言を反芻するうちに、自身の発言に慄[おのの]いた。

「中国軍が、台湾の潜水艦を救助した」――私は、臆面もなくそう言い放った。

 どう考えても「拿捕した」としか言いようがない状況なのに。

 さらにあろうことか、強引に台湾の潜水艦を奪取した中国に、私は謝辞を述べてしまった。

 これでは、まるで国賊か、詐欺師か、いや中国の回し者じゃないか。

 外務大臣は、絶対に華と二人で記者会見をやってはならぬと言い、官房長官は、記者会見したら「国会議員をお辞めなさい」と突き放した。

 なのに、彼らの忠告、いや脅迫を振り切って、私は自分の信じる選択をした。

 そうだ。日本にとって最悪のシナリオは、台湾を挟んで米中が戦争を起こすことだ。可能性は、限りなく低いと言われているが、それでもゼロではない。

 そして、中国は、その現実性を試すために、とんでもない手を打ってきた。

 都倉の戸惑いなどお構いなしに、日中のメディアからの質疑応答が始まっていた。……

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
真山仁(まやまじん) 1962(昭和37)年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004(平成16)年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』で衝撃的なデビューを飾る。同作をはじめとした「ハゲタカ」シリーズはテレビドラマとしてたびたび映像化され、大きな話題を呼んだ。他の作品に『プライド』『黙示』『オペレーションZ』『それでも、陽は昇る』『プリンス』『タイムズ 「未来の分岐点」をどう生きるか』『レインメーカー』『墜落』『タングル 』など多数。
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