オペレーションF[フォース] (50)

連載小説 オペレーションF[フォース] 第50回

執筆者:真山仁 2024年2月3日
タグ: 日本
エリア: その他
(C)AFP=時事[写真はイメージです]
国家存続を賭けて、予算半減という不可能なミッションに挑んだ「オペレーションZ」。あの挫折から5年、新たな闘いが今、始まる。防衛予算倍増と財政再建――不可避かつ矛盾する2つが両立する道はあるのか? 目前の危機に立ち向かう者たちを描くリアルタイム社会派小説!

【前回まで】帰国した都倉響子は、党四役から総務会長解任と党員除名を告げられる。議員辞職の要求を辛うじて突っぱねた都倉にとって、江島元総理からの電話だけが救いだった。

 

Episode5 四面楚歌

 

17

 衆議院第一議員会館の地下駐車場に到着した都倉は、ダークスーツの集団に取り囲まれた。

「外務省北米局次長の甲斐と申します。大臣が、至急お会いしたいと申しておりまして、お時間を戴けないでしょうか」

 甲斐は、名刺ではなく身分証明書を示した。

 大臣のお遣いに、北米局次長がやってきた意味を察して、都倉は素直に従った。

 第一秘書の木戸が続こうとしたが、止められた。

「申し訳ございません。都倉先生、お一人でお願いできますか」

 木戸が抗議しようとしたが、都倉が「大丈夫よ」と押しとどめ、一人で黒塗りの公用車に乗り込んだ。

 繁森外相は、ホテルオークラの一室で待っていた。

 これは、公式な面談ではない、という意味だ。

 相変わらず、慇懃な繁森は、律儀に腰を上げて迎えた。

「この度は、色々とご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 繁森に奨められるままに、ソファに腰を下ろした。大臣を囲むように、北米局長や、安全保障担当審議官などのお歴々が並んでいる。

「各方面でハレーションが起きています。中でも、アメリカからの抗議は激怒といってもいい。深刻な外交問題になる可能性もあり、そこで、都倉先生にご協力戴いて、善処する必要があります」

「畏まりました。それで、何をやればいいですか」

「アメリカの情報機関が、先生から直接お話を伺いたいそうです」

 それを外務大臣が仲介するのか。……

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
真山仁(まやまじん) 1962(昭和37)年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004(平成16)年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』で衝撃的なデビューを飾る。同作をはじめとした「ハゲタカ」シリーズはテレビドラマとしてたびたび映像化され、大きな話題を呼んだ。他の作品に『プライド』『黙示』『オペレーションZ』『それでも、陽は昇る』『プリンス』『タイムズ 「未来の分岐点」をどう生きるか』『レインメーカー』『墜落』『タングル 』など多数。
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