悪党たちのソ連帝国 (2)

第2回 レーニン 帝国の創始者(後編)

執筆者:池田嘉郎 2024年2月18日
カテゴリ: カルチャー
エリア: ヨーロッパ
演説を行うレーニン(1920年5月)
レーニンが解体したはずの「ロシア帝国」は、いかにして強大な「ソ連帝国」として再建され、現在の「プーチン帝国」にいたったのか――ソ連に君臨した6人の悪党たちの足跡から、ロシアという特異な共同体の正体を浮き彫りにする新連載。第2回は、今年逝去100年を迎えたレーニンがいよいよソヴィエト政権を樹立、「ソ連帝国」の礎を築く様を丹念に追う。

(前回「第1回 レーニン 帝国の創始者(前編)」はこちら)

2.ロシア革命から内戦へ

1917年

 世界大戦の重圧はロシア帝国を軋ませた。兵士輸送の負担が運輸を疲弊させ、広大な帝国の経済的一体性を弱めた。これが都市部の食糧供給に悪影響を与え、住民の不満を高めた。1917年2月末、ペトログラード(開戦直後にドイツ風のペテルブルグから改称した)で労働者の街頭運動が起こると、守備隊兵士も合流して革命となった。カデット主体の臨時政府が成立し、ロマノフ朝は消滅した。エスエルとメンシェヴィキは1905年の経験にならって各都市にソヴィエトをつくり、労働者と兵士の組織化に努めた。民主的な講和の早期実現に向けて臨時政府に圧力をかけるというのが、エスエル・メンシェヴィキの方針であった1

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執筆者プロフィール
池田嘉郎(いけだよしろう) 1971 年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士(文学)。専門は近現代ロシア史。主な著書に『革命ロシアの共和国とネイション』(山川出版社、2007 年)、『ロシア革命 破局の8か月』(岩波書店、2017 年)、共著に『世界戦争から革命へ (ロシア革命とソ連の世紀 第1巻)』(岩波書店、2017年)、訳書にミヒャエル・シュテュルマー『プーチンと甦るロシア』(白水社、2009年)、アンドレイ・プラトーノフ『幸福なモスクワ』(白水社、2023 年)などがある。
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