悪党たちのソ連帝国 (9)

第9回 アンドロポフ 帝国の矯正者(前編)

執筆者:池田嘉郎 2024年9月29日
タグ: ロシア
エリア: ヨーロッパ
2014年に発行されたアンドロポフを記念した切手
かつてのソ連に君臨した6人の悪党たちの足跡から、ロシアという特異な共同体の正体を浮き彫りにする好評連載。第9回は、6人の中で最も謎めいた人物であるアンドロポフを取り上げる。

「舞台でソ連社会を批判 新しい国家像を模索 演出家のリュビーモフ氏 劇場前に長い列」。『朝日新聞』1977年11月11日付け朝刊の国際面に、このような見出しの大きな記事が掲載された1。タガンカ劇場首席演出家リュビーモフ――レーニンの葬式で頬を赤くしていたユーリー――は、検閲に苦しみながらもソ連で自由な表現を追求する芸術家として、いまや国際的に有名になっていた。ソ連指導部はユーリーの発言を報じる西側メディアの内容に神経を尖らせ、あいかわらず検閲で彼を苦しめ、外国公演の許可も簡単には出さなかった。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
池田嘉郎(いけだよしろう) 1971 年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士(文学)。専門は近現代ロシア史。主な著書に『革命ロシアの共和国とネイション』(山川出版社、2007 年)、『ロシア革命 破局の8か月』(岩波書店、2017 年)、『ロシアとは何ものか―過去が貫く現在』(2024年、中公選書)、共著に『世界戦争から革命へ (ロシア革命とソ連の世紀 第1巻)』(岩波書店、2017年)、訳書にミヒャエル・シュテュルマー『プーチンと甦るロシア』(白水社、2009年)、アンドレイ・プラトーノフ『幸福なモスクワ』(白水社、2023 年)などがある。
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