Weekly北朝鮮『労働新聞』 (64)

三代指導者に仕えた元宣伝扇動部長が死去、金正恩時代で11人目の国葬(2024年5月5日~5月11日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年5月13日
タグ: 金正恩 北朝鮮
エリア: アジア
金正恩国務委員長は金己男氏の「真の革命生涯と不滅の功績」を讃えた[5月7日、棺の前に並ぶ北朝鮮の幹部たち/AFP PHOTO/KCNA VIA KNS](C)AFP=時事
労働新聞の責任主筆や党の宣伝扇動部長などを歴任した金己男・元国務委員が94歳で死去した。現政権下で11回目の国葬が営まれ、金正恩国務委員長自身が葬儀委員長を務めるのは今回が7回目となる。8日付と9日付には、プーチン大統領の就任式と対独戦勝記念日を祝うロシア向けの祝電が紹介された。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 5月8日付の1面は、北朝鮮の三代指導者に仕えてプロパガンダを担った金己男(キム・ギナム)氏(94)の死去に関する報道であった。1面トップには遺影とともに「訃告」(朝鮮労働党中央委員会、国務委員会、最高人民会議常任委員会、内閣の4機関連名)と略歴が、その右横には金正恩(キム・ジョンウン)を委員長とする国家葬儀委員会の名簿が掲載された。また、第2面上段は、金正恩が金己男の霊柩を訪ねたとの報であった。

『労働新聞』掲載の略歴によると、1929年生まれの金己男は、1970年から朝鮮労働党機関誌『勤労者』や機関紙『労働新聞』の副主筆、責任主筆を経て1985年に党中央委員会宣伝部長(のちに宣伝扇動部長)となり、2016年からは金正恩政権下で国務委員会委員にも就任していた。2011年12月に死去した金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の葬儀の際、霊柩車に寄り添った8人のうちの1人でもあり、金永南(キム・ヨンナム)前最高人民会議常任委員長の弟としても知られる。

 このような重鎮幹部の訃告は金正恩時代に入って急増した。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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