「今週のトランプ」ラウンドアップ
「今週のトランプ」ラウンドアップ (7)

トランプ大統領の発言とアクション(4月24日~5月1日):「衝撃と畏怖」の就任から100日、経済と株価は低迷

執筆者:安田佐和子 2025年5月3日
エリア: 北米
大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任されたウォルツ氏の後任には、ウィトコフ中東担当特使、ミラー大統領次席補佐官、グレネル特使(特別任務担当)らの名前が浮上している[シリコンバレーの主要企業が集まるヒル&バレー・フォーラムで演説したウォルツ氏=2025年4月30日、アメリカ・ワシントンDC](C)AFP=時事
トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した1週間分の発言を、ストリート・インサイツ代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼就任100日の支持率は1937年以降で最低▼相互関税、90日間の停止中に探る大筋合意▼ウォルツ氏解任の背景に対中強硬派の失墜?

 

就任100日の支持率は1937年以降で最低

 ホワイトハウスは4月29日、X(旧ツイッター)にてドナルド・トランプ大統領の就任100日にあたり「米国を再び偉大な国へ導いてきた100日間! LFG!!!」と投稿した。このLFGとはLet’s Goの間に米国で放送禁止用語となっているFワードが入った俗語表現の略語。トランプ氏の有権者ですら、「ホワイトハウス公式がLFGを使用するとは」との声が聞かれるが、つつましい日本語に訳せば「さあ、まだまだいくぜ!」だろうか。別の投稿では、就任100日間の26に及ぶ実績を列挙する。下記は、リストの一部だ。

▼1月から34.5万人の雇用創出、このうち18.8万人(54%)は非政府関連で、新たな雇用創出の4分の3が政府関連だったバイデン前政権から劇的な改善を示す

▼退役軍人の失業率、4.2%→3.8%へ低下

▼処方箋薬価、トランプ就任から2%以上下落

▼CPIベースのガソリン価格、トランプ就任から7%下落

▼卵の価格、トランプ就任から約50%下落

 共和党もXにて、FOXニュースの映像を使ってトランプ氏の実績を喧伝。大統領令の署名数は142本、インタビュ―106本、米国人の人質を26人解放、海外・民間の投資額5兆ドル、政府効率化省(DOGE)による歳出削減額1600億ドルなどの画像と共に「米国が存在を取り戻した!(America is BACK!)」とのメッセージを掲げた。

【共和党、トランプ就任100日を受けたXの投稿】
出所:GOP/X

 ただし、就任100日の大統領支持率と株価は低迷している。支持率をみると、ワシントン・ポスト紙がABCニュース、イプソスとの世論調査結果を基に報じたところ、就任100日にあたり、トランプ2期目の支持率は39%と、フランクリン・ルーズベルト大統領2期の1937年以降で最低だ【チャート1】。

【チャート1:近年の大統領、就任100日の支持率】

 CNBCがCFRA リサーチの調査を基に1945年以降、21回のS&P500のリターンを比較したところ、下落は7回。トランプ2期目はそのうちの1つで7.9%安と、2番目の弱さを示した。

 ホワイトハウスは雇用創出とインフレ鎮静化を喧伝するが、世界に「衝撃と畏怖」を与えた各種のトランプ関税が痛手となり、支持率や株価を押し下げたことは言うまでもない【チャート2】。4月発表分の地区連銀経済報告(ベージュブック)では、「関税」との文言が107回登場、「不確実性」も89回と、それぞれ前回の49回、47回から急増した【チャート3】。

 【チャート2:トランプ関税一覧】
【チャート3:ベージュブックのキーワード登場回数】

 ただ、足元では明るい兆しが見え隠れする。

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カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
安田佐和子(やすださわこ) ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事するかたわら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。
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