「今週のトランプ」ラウンドアップ
「今週のトランプ」ラウンドアップ (30)

トランプ大統領の発言とアクション(10月2日~8日):「高市新政権」への前祝いの狙いは?

執筆者:安田佐和子 2025年10月11日
エリア: アジア 北米
トランプ大統領が相手を「名前」で呼ぶかは関心度合いのバロメーター?[自公党首会談後、厳しい表情で記者団の取材に応じる自民党の高市総裁=10月10日午後、東京・永田町の同党本部](C)時事
トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した1週間分の発言を、ストリート・インサイツ代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼トランプ氏のお祝いメッセージに高市氏の名前なし▼トランプ政権は新たな「ディール」を狙うのか

 

トランプ氏のお祝いメッセージに高市氏の名前なし

 世界的に大ヒットした米国ドラマ『ブレイキング・バッド』の名台詞のひとつが、「俺の名を言え(Say my name)」。高校の化学教師だった主人公ウォルター・ホワイトが、覚醒剤密造に手を出し、裏社会の頂点へと上り詰める過程で放ったこの言葉である。ドラッグ取引のために使用する名前“ハイゼンベルク”の存在を相手に認識させ、恐れと敬意を強制する名場面として、ファンの間で記憶されている。

 ドナルド・トランプ大統領の「米国を再び偉大な国に(Make America Great Again=MAGA)」というスローガンは、あまりにも有名だ。彼にとっての「俺の名を言え」は、自身の名だけでなく、この「MAGA」という言葉そのものだろう。日本、韓国、欧州連合(EU)などとの関税協議や対米投資の枠組みを含む合意内容にも、MAGAを推進する内容が盛り込まれている。

 日本で10月4日に自民党総裁選の投開票が行われ、高市早苗氏が選出された。その2日後、トランプ氏はトゥルース・ソーシャルで「卓越した知恵と強さを備えた、非常に尊敬される人物である」と祝意を表明。スコット・ベッセント財務長官も続いて、トランプ氏の投稿を紹介するX(旧ツイッター)をリポストする形で高市氏へお祝いのメッセージを投稿した

【トランプ氏とベッセント氏、高市新総裁へのお祝い投稿】
出所:Donald J. Trump/Truth Social 拡大画像表示
出所:Treasury Secretary Scott Bessent/X 拡大画像表示

 

 トランプ氏からの祝意に対し、高市氏はXにて「日米同盟をより一層強く、より豊かにするために、そして、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を進めるために、トランプ大統領と共に取り組んでいくことを楽しみにしております」と返信した。このやりとりはX上でも歓迎ムードに包まれ、高市氏のコメント欄には賛同の声が相次いだ。日本の主要メディアも一斉に報じるなど、両者の関係は良好な滑り出しを見せている。

 しかし、トランプ氏は高市氏の名前に言及しなかった。振り返れば、トランプ氏は石破茂首相の名前も積極的に取り上げてこなかった。2月7日の日米首脳共同会見では石破氏の名前に2度言及したものの、そこに安倍晋三元首相の名は5度登場するなど、温度差がみられた。トランプ氏のトゥルース・ソーシャルには、石破氏の名前は一度も登場していない。関税合意に関する投稿でも石破氏とのツーショット写真を添えたのみで、そこに石破氏の名前はない。

 一方で、

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
安田佐和子(やすださわこ) ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事するかたわら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。
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