過去1世紀で「最も進軍速度の遅い戦争」5年目の焦点
2026年2月24日で、ロシアによるウクライナ全面侵攻開始から4年が経過した。戦争はすでに、独ソ戦(約3年10カ月)を超える長期戦となり、第二次世界大戦後の欧州における最大級の消耗戦となっている。国連人権監視団によれば、民間人被害は確認済みだけでも死者1万5000人超、負傷4万1000人超に達しており、実数はさらに多い可能性がある。軍事損耗も極めて大きく、CSIS(戦略国際問題研究所)は2025年末時点でロシア軍の死傷者を約120万人、ウクライナ軍を50万~60万人と推計している。合計では170万~180万人規模に達し、2026年春には200万人規模に近づく可能性すら指摘されている。
戦争の三つの特徴――消耗・戦法革新・持久
この戦争の第一の特徴は、戦場が膠着しているにもかかわらず、損耗だけは加速度的に拡大していることである。CSISの分析によれば、2024年以降のロシア軍主要攻勢の進軍速度は、ウクライナ東部のチャシウ・ヤール方面で1日15メートル、クピャンスク方面で23メートル、ポクロウシク方面でも70メートル程度にすぎない。換言すれば、ロシア軍は局地的前進を続けているものの、その速度は過去1世紀の主要攻勢作戦の中でも最も遅い部類に属する。わずかな前進にもかかわらず、2025年のロシア軍死傷者は約41.5万人に達し、単純計算で1日平均1100~1200人規模の死傷者を出したことになる。大量の人的損耗に値する陣地拡大も得られない中、ひたすらウクライナ東部ドネツク州の全域占領に向け攻撃を継続する――これがロシアの戦いの現状である。
第二の特徴は、戦法革新の速度が非常に速いことである。例えば、ウクライナ軍は、戦争当初の民間用ドローンから手榴弾を投下する工夫に始まり、ドローン自体を爆弾化して攻撃兵器として活用する段階へと発展させ、次いでロシア軍による電波妨害を回避するため誘導方式を光ファイバーによる有線誘導へと進化させるなど、数カ月単位で戦法を刷新してきた。このドローンの普及は、戦場の様相を大きく変えた。Reutersが報じたウクライナ側内部推計によれば、2024年にはロシア兵への打撃の69%、車両・装備への打撃の75%がドローンによるものだった。昨年は両軍とも電波妨害に強い光ファイバー誘導型ドローンの実戦投入が進み、前線両側それぞれ約20キロ、両軍合わせると約40キロの帯状地域が常時ドローンの脅威にさらされる「キルゾーン」と化している。陣地占領のため敵陣地に近接しようとする歩兵の行動、その歩兵への補給活動のすべてがドローンによって監視・妨害される時代に入っている。
戦争の本質が「土地の恒久支配」にある以上、最終的に陣地を占有するのは歩兵である。敵陣地に歩兵が突入し占領して初めて領土が拡大する。現在のウクライナでの戦争では、その歩兵を陣地戦に突入させるまでの過程で、ドローン、砲兵、地雷、電子戦が複合的に作用し、攻撃側の戦場移動を極限まで鈍化させている。結果として、少人数による迂回浸透、夜間侵入、二輪車やバギーを使った短距離突撃など、より小規模・分散型の戦法が常態化した。
第三の特徴は、ロシアが甚大な損耗にもかかわらず、なお持久戦能力を保持していることである。NATO(北大西洋条約機構)のマルク・ルッテ事務総長は昨年6月、「ロシアが3カ月で生産する弾薬量はNATO全体の1年分に匹敵する」と述べた。すなわち、ロシアの年間弾薬生産はNATO全体の約4倍に達する計算になる。また、ロシア側は戦時経済体制の中、弾薬・ドローン・車両の生産を大幅に増強してきた。質では西側に劣る分野があっても、量産能力と継戦能力の面では依然として侮れない。
持久戦を支える構造――権威主義国ネットワークと経済の限界
これを下支えしているのが、北朝鮮・中国・イランの権威主義国である。
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