砕けたスリーダイヤの威信

執筆者:安西巧 2000年10月号
タグ: 日本

三菱自動車事件が象徴する最強企業集団の落日 笑止千万というほかない。 三十一年間にわたるリコール(無料の回収・修理)隠しが発覚してメーカーとしての信頼が地に落ちた三菱自動車工業が、九月末に発表した社内処分のことである。 河添克彦社長は十月三十一日付で引責辞任するものの、取締役の肩書きは残る。問題発覚当初、「雪印の二の舞というのは大間違い」などと大見得を切っていたにもかかわらず、組織的な背信行為が次々に明らかになった。それでも辞任の決断ができず、複数の三菱グループ首脳の諫言によってようやく腹をくくった。だが、その結果が前任社長がボード・メンバーに残留する不自然な経営形態である。不信を募らせる顧客ユーザーや投資家がこの“刷新人事”をどう受け止めるか。この会社にはいまだに理解できていない。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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