そのピノー氏、実はもう一つ、さらに頭の痛い問題を抱えている。十一月四日、PPR傘下のブランド企業「グッチ」から、同社を躍進させた立役者のドメニコ・デ・ソーレ社長(五九)と主任デザイナーのトム・フォード氏(四二)が来年四月に去ることが発表されたからだ。両氏はPPRと一年近くにわたって契約交渉を続けてきたが、経営を完全に掌握したいPPRと、独立性を保ちたい両氏との考えの差は最後まで埋まらなかった。ベルナール・アルノー会長率いるブランド複合企業、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンに対抗して、一大流通・ブランド企業を築こうとしたピノー氏にとっては大きな痛手だ。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン