新START批准はオバマ政権の予想外の金星

執筆者:渡部恒雄 2010年12月29日
エリア: 北米 ヨーロッパ

 米上院は12月22日の本会議で、ロシアとの核軍縮条約である新START(戦略兵器削減条約)の批准を賛成71、反対26で承認した。これは、中間選挙で大敗したオバマ政権にとってはかなりの「金星」といえる。11月の時点では、共和党側が敢えて「核なき世界」でオバマ外交に得点を挙げさせるような協力姿勢をとることはないだろうという悲観的な見方が支配的だったからだ。

 この逆転成功の理由のひとつには、他のふたつの重要法案、ブッシュ減税の継続と、同性愛者の軍への入隊禁止規制の撤廃同様、これまでの民主党議会だけに頼る手法から、共和党議会の協力を求める手法に切り替えたことがある。オバマ政権は、中間選挙での敗北により、2011年の議会からは共和党議会からの協力なしには法案は成立しないという厳しい現実が待ち受けているため、今後の新しい政治の現実の先取りともいえる。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席フェロー。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
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