中国スパイ、日本企業を対象にした秘密工作は成功か

執筆者:春名幹男 2012年6月2日
エリア: アジア

 外国人登録証を不正に入手した在日中国大使館の李春光1等書記官の事件。警視庁公安部が5月31日、彼を外国人登録法違反などで書類送検し、捜査を終了した。大手各紙は1日まで、大きく報道したが、2日、このニュースは紙面から消えた。

  この事件で日本の大手メディアは、中国が日本政府の機密情報入手に狙いを定めているかのような報道をしてきた。しかし、現実はそれほど単純ではない。

 このままだと、中国が日本で行なっていると想定される工作が誤解される恐れがある。後述するが、中国は秘密の情報収集工作に加えて、広範な分野でいわゆる秘密工作(covert operation)も展開していることを、あえて指摘しておきたい。李書記官は末端でそうした工作に従事していた疑いがあるからだ。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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