政治をゼロから考える (4)

領土問題から見えてくる「国家」と「社会」の関係

執筆者:宇野重規 2012年8月27日
エリア: アジア

質問 「国境はどのようにして決まるべきですか」


 ここのところあらためて国境問題が浮上しています。日本は、竹島問題(韓国名・独島)で韓国と、尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題で中国との間に緊張が高まっており、ロシアとの間にも北方4島の問題を抱えています。
 ちなみに8月10日には、韓国の李明博大統領が竹島を訪問して議論を呼びましたが、その当日、筆者はたまたま島根県の隠岐の島にいました。竹島は隠岐の島から157kmの場所にありますが、行政区域でいえば、隠岐の島町に属します。静かな島の町に国境紛争の緊張は感じられませんでしたが、よく見れば海上保安庁の船が停泊するなど、動きがあったようです。
 このテーマを考えるにあたっては、なぜ現在、これらの島々の領有権問題が先鋭化しているのか、その背景を考えなければならないでしょう。領海や排他的経済水域の設定をめぐっては、漁業権や水中・海底資源の問題が重要ですし、安全保障上も深刻な影響があります。それぞれの国の抱えたナショナリズムの問題もあるでしょう。さらにこれらの島々がどの国に帰属すべきかについては、歴史的な経緯を振り返る必要があることはいうまでもありません。
 とはいえ、本稿ではこれらの問題は扱いません。むしろ、筆者が離島で考えたり、見聞きしたりしたことを元に、国境問題についてもう少し原理的な考察を加えてみたいと思います。できれば、「そもそも国家とは何なのか」という政治学の最大テーマにも、さわり程度には触れるつもりです。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
宇野重規(うのしげき) 1967年生れ。1996年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。東京大学社会科学研究所教授。専攻は政治思想史、政治哲学。著書に『政治哲学へ―現代フランスとの対話』(東京大学出版会、渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトン特別賞)、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社、サントリー学芸賞)、『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波新書)、共編著に『希望学[1]』『希望学[4]』(ともに東京大学出版会)などがある。
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