戦後米国保守思想史の起点にいた思想家ラッセル・カークのことを続ける。 戦後間もなく、彼が試みたのはアメリカの思想風景を変えることだった。ただ、はじめから、一種の敗北感を抱いていた。それは、初期の代表作『保守主義の精神』(一九五三)のタイトルを『保守主義の潰走』(The Conservative Rout)としたがっていたことにうかがえる。 それから三十年を経て、米国はレーガン時代以降、保守主義隆盛の時代に入る。その中で、カークは思想的バックボーンを作った「大御所」とみなされるようになった。しかし、一九九四年のその死に至るまで、どこか「居心地の悪さ」を感じ続けていた。

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