誰も責任をとらない。誠意をもって年金記録回復にもあたらない。厚生労働省キャリアも社会保険庁職員も……。 昨年十二月十七日、受給権が誰にあるのか分からない年金保険料の納付記録五千万件の持ち主を特定するため、全国民に記録の確認を促す「ねんきん特別便」の発送がスタートした。今年一月中旬までに発送された七十三万通は、受給権の持ち主である可能性が極めて高い人たちに宛てたものだが、一月中に訂正された記録は五万件あまりしかない。 記録を正せば受け取る年金額が増えるにもかかわらず、訂正件数が極端に少ないのは、「特別便」に同封された説明文書が曖昧で、受け取った人が何をどうすればいいのか分からないことに加え、記録の訂正には社会保険事務所まで本人が出向かなければならないなど、手続きが恐ろしく煩雑なためだ。さらに、社会保険事務所に出向いても、本人に正確な記憶がなければ訂正を認めないという意地の悪い対応をしていたことも、作業の遅れに拍車を掛けた。

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