経済の頭で考えたこと (2)

イランを訪れて感じた「変化」へのかすかな兆し

 二月のテヘランでは雪が降る。寒風は東京と変わらない。決定的に違うのは大渋滞の車の排気ガスである。ほこりっぽさとあいまって弱い人は気管支をやられるだろう。 二〇〇六年八月、〇七年十月に続く三度目のテヘラン訪問だったが、街の雰囲気に違いがある。国際社会との接触面を映すかのようだった。 〇六年の夏はテヘランに昂揚感が満ちていた。宗教者の歴史的施設が並んだ通りの電柱には、レバノンからイスラエルにひとあわ吹かせたシーア派イスラム勢力のヒズボラ指導者ナスララの写真が飾られていた。これではヒズボラの支援者はイランだと白状したようで、イラン政府の公式表明との差は大きかった。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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