自動車メーカーもそうだが、あらゆるメーカーには開発・設計、組み立て、メンテナンス、採算を考える四部門がある。それぞれに最善を尽くすが、一方で互いに牽制し合う。いくら凄い新製品を設計しても、ソロバンに合わなければ製造しない。それが常道なのに、採算を度外視して凄いものを作ってしまった。超音速旅客機コンコルドの悲劇は、そこにあったのではないか。 ヨーロッパの一致・和合の象徴として計画発表された一九六二年、フランスはドゴール大統領だった。何が何でも「西洋の没落」を食い止めるぞという強い意志の人だった。英仏の科学者は知恵を絞り、技術の粋を集めてコンコルドを造った。就航して三十年近く、それは二百万人超を「音の壁」を破って無事に運んだ。

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