九九年一月に、ユーロが正式に欧州を代表する通貨になった時の対円相場である。執筆の九月六日時点では九三円台にある。三〇%の下げだ。円を持つ日本の旅行者が欧州に行って、「安い」と感じるのは当然である。 旅行者は得をしても、日本の機関投資家が対欧州投資で被った損失は膨大だ。なぜ下げ続けるのか。ティートマイヤー前ドイツ連銀総裁などは、アメリカとの成長率格差を語る。アメリカの方が成長率が高いからだという説明である。しかし、これでは成長率がはるかに低い日本の円が対ドルで水準を保っていることを説明できない。むしろ背景にあるのは欧州からの資本流出、それにEUという寄せ集めの国家連合のガバナビリティー(統治可能性)の問題だ。
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