山間の小さな学校に、十五年続く作文教室がある。子供たちはよく読み、よく語り、よく書く。国語力の重要性が認識される今、ここに学ぶことは多い。〈谷川の岸に小さな学校がありました。教室はたった一つでしたが生徒は一年から六年までみんなありました。運動場もテニスコートのくらいでしたがすぐうしろは栗の木のあるきれいな草の山でしたし、運動場の隅にはごぼごぼつめたい水を噴く岩穴もあったのです〉(『風の又三郎』より) 山の中腹にあり学校の脇を谷川が流れる木細工小学校は、宮沢賢治が『風の又三郎』を書く際にモデルとした場所の一つとされる。東京から新幹線で三時間と車で三十分、岩手県中部の山間の小さな学校に、二十二人の“詩人”がいる。木の香り漂う校舎の玄関には生徒が受賞した各種の詩や作文コンクールの賞状と盾がところ狭しと並んでいる。木細工小学校の子どもたちの作文はいかにして生み出されるのか、北上山地の町を訪ねてみた。

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