イラク、北朝鮮の核疑惑の渦中で注目されている国際機関IAEA。1957年、バラ色の原子力産業を思い描いて設立されてから半世紀、“核の番犬”の異名を取る組織の役割と限界とは―― ギリシャ神話のプロメテウスが盗んだ「天の火」が核エネルギーだとするなら、国際原子力機関(IAEA)とはさしずめ、最高神ゼウスから下される罰を何とか免れ、禁断の火の利益を最大限、享受しようとして作られた世界組織ということになる。一九五七年、米大統領アイゼンハワーの国連総会演説「平和のための原子力」を具体化するため、国連の独立機関として設立されたIAEAは、核不拡散の守護者である半面、原発・核技術の普及を促進する二つの顔を併せ持つ。核時代を生きることの試練は厳しさを増し、IAEAに重くのし掛かっている。

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