フランスと西独の間で一九六三年一月二十二日に結ばれたエリゼ条約は戦後の仏独関係の出発点である。条約の名がとられたフランス大統領官邸で、フランスのドゴール大統領と西独のアデナウアー首相が署名した。 条約の中身自体は極めて無味乾燥だ。曰く、両国首脳は年二回会談する。両国外相は年四回会談する……。友好や協力といった言葉は一度も出てこない。 戦災の記憶がまだ癒えない当時の仏・西独関係は、まず両国首脳が会う枠組みを作り、それを出発点に中身(友好関係)を徐々に埋めていくというプロセスを踏んだことがよくわかる。言葉だけでも取りあえず友好を謳って繕う、という幻想は、この条約には一片たりともうかがえない。しかし百三十年余に三度戦火を交わした両国は、これによって恩讐を超えた関係を構築することになった。

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